「NO MSG」と差別

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このアメリカの「NO MSG」の問題は私は最近まで知らなかった。知ってみると、環境問題などに触発された科学不信や「自然」志向と、アジアへの差別的な視線が連動したとても考えさせられる現象だった。
この記事でも説明されているように、MSGを最初に開発し商品化したのは日本人なのだが、それが「中華料理店シンドローム」として中華系移民のバッシングにつながったあたりも複雑な気分になる。

日本でも、味の素は「食べると頭がよくなる」というようにもてはやされた時代から、一転して「体に悪い」「手抜きだ」と叩かれるようになり、いまだに「化学調味料」として嫌われる風潮は続いている。「味の素など使わず出汁を取る」ことが良い妻、良い母の象徴のように言われて、食事を作る女性に余計なストレスをかけたりもしている。そもそも大量の昆布をぐつぐつ煮詰めて発見されたのがグルタミン酸で、昆布で出汁をとるのと味の素を入れるのは結果的にはあまり違わないはずなのだが。
(自分の好みで昆布出汁を取るのは全く問題ないと思います。みんな味の素を使えと言っているのでもありません。問題は、時間短縮や効率や別の好みで味の素を使っている女性に、「そんなものを使うなんて手抜きだ」と説教するようなバカが日本にはまだうじゃうじゃいるということです。)

以下、引用。

"科学的には、グルタミン酸ナトリウムを常識的に食べる量であれば安全とされています(食品安全委員会の資料「食べ物の基礎知識」参照)。

味覚障害を引き起こすとの説も、後述しますが根拠はあやふや。あり得ない、という見方が科学者の大勢です。なのに、消費者の中には嫌う人が多い。その現象は世界で見られ、アメリカでもno-MSGとパッケージに大きく書いた食品が売られています。どうして誤解されているのでしょうか?"

"さらに印象に残ったのは「アメリカ人のno-MSGという意識の裏側にはレイシズム(人種差別)があるのでは?」という指摘でした。

つまり、「アジアから来たわけのわからない調味料なんて、食べてもろくなことにならないに決まっている」という人種差別、偏見があった、とアメリカ人自身が言うのです。"

"アメリカにおけるMSGの歴史も紹介されました。味の素は1909年の創業ですが、1920年代にはアメリカへの輸出を始めています。

しかし、アメリカ社会に一気に普及したのは、第二次世界大戦後。陸軍が、兵隊たちに配る缶詰の食品、いわゆる「ミリメシ」の不評に困り、改善策を模索した中で浮上したのがMSGでした。MSG使用により味が劇的によくなったのです。その後、市販の加工食品や外食でも使われるようになります。

ところが、1968年、大事件が勃発します。アメリカの医師が、MSGを大量に食べたことが原因で頭痛や顔のほてりなどが起きたとして、「中華料理店シンドローム」と名付けて権威ある学術誌「New England Journal of Medicine」で報告したのです。

これを契機に、MSGの評判は一気に下降。動物の腹腔にMSGを大量に注射するような無理な実験で出た症状も、MSGは悪い、とする根拠となりました。

その後、多くの実験・研究が行われ、1987年にはFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が安全だと認め、EUアメリカ食品医薬品局(FDA)なども同様の判断を示しました。しかし、風評は収まらず今に至っています。"